舞城王太郎『暗闇の中で子供』

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)
以下、ネタバレあり。
再読終了。初読時よりも楽しんで読めたと思う。

  1. 「ONE」
  2. 「TWO」
  3. 「THREE」「FOUR」
  4. 「FIVE」
  5. 「SIX」「SEVEN」
  6. 「EIGHT」
  7. 「NINE」

2と3のあいだにある齟齬は初読時に気づいたけど、5と6のあいだにも断絶があることには今回再読して初めて気づいた。
具体的にいうと、「EIGHT」以降、

  • 連続殺人事件にかんする記述がない。
  • 四郎の状態に齟齬がある。

ということで、逆に連続殺人事件以外の部分にかんしては、それ以前の章と連続している。
問題となるのは池の名前なんだけど、その部分を除外すれば、「EIGHT」に限っていえば「事実」しか書いていない章であるようにも読める。
さて、そうなると、「THREE」以降(「NINE」を除く)の「虚実」の切り分けができるかもしれない。つまり、上村哲郎と巨大な子供による連続殺人事件のみがで、それ以外はすべて本当か、あるいは限りなく本当に近いことだという解釈だ。これは、まあ、かなり現実的な読み方だ。
しかし、「現実的」というなら、「ONE」の猿江楓のエピソードはいいのか? 仮にこれも本当のことにまぎれ込ませた嘘だとしよう。「FIVE」を中心線として、章ごとの虚実の扱いが線対称になっているという意味があるのかないのかわからない仮説を立ててみてもいい。
○=本当 ×=本当+嘘
1.「ONE」→×
2.「TWO」→○
3.「THREE」→×
4.「FOUR」→×
5.「FIVE」→○
4.「SIX」→×
3.「SEVEN」→×
2.「EIGHT」→○
1.「NINE」→×
という具合に。
それでも、「TWO」と「EIGHT」にある池の名前という矛盾点は消えない。まあ、別に厳密に判断しなくてはならないという問題でもないんだけど。