舞城王太郎「みんな元気。」(「新潮」9月号掲載)

ようやく読み終えた。
どうも登場人物が多すぎて名前を覚えられず前半は読み進むのがつらかったんだけど、後半の杉山家を舞台にしたあたりはたいへんおもしろかった。可能性としての3つの「未来」が同時に重なって目の前に存在しているという状況を強引な力技で書いていたりして、このあたりは『九十九十九』を裏返しにしたような印象を受けた(←思いつきで書いているので、イメージとしても正確な表現ではないかもしれない)。
もともと、舞城王太郎の語り口は、逡巡とか迂回といったまわりくどい過程を省略していきなり「核心」について書いてしまうところに特徴があると個人的には思っていて、そのせいでいささか書き急いでいる印象を受けることもたびたびあるんだけど、この作品ではその書き急ぎぶりにさらに拍車がかかっていて、いきなり「核心」を書くどころか何の前置きもなく「次の話題」について語りはじめる暴走ぶりが楽しい。何というか、物語るスピードが速すぎて「物語」そのものを追い越してしまったような感じ。て、意味不明ですね。