津原泰水『綺譚集』ISBN:4087747034

helioterrorism2004-08-27

読了。堪能しました。
例えば生と死。あるいは現実と非現実。それら不連続なはずのものが、津原泰水の作品のなかではなめらかに繋がっている。記号としての境界線は慎重に排除されている。
現実、妄想、回想、幻想……そういった、異なるレベルに属するはずの記述対象を、作者はみごとに混淆させる。しかし、作者自身は決して混乱していない。自分が書いている対象のレベルを明確に把握しており、結果として混淆しているのではなく、意図的に、技術的に、混淆させている。
だから、帯に寄せられた6人の作家の推薦文のなかでは、竹本健治による

当代もっともスタイリッシュな文章のマジシャンが織りなす綵(あやぎぬ)の数々を見よ。

という一文が、平凡ながらもっとも的確な評だと思う。