すが秀実・渡部直己『新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド』

新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド

新・それでも作家になりたい人のためのブックガイド

ひととおり読了。
〈ブックガイド篇〉は、タイトル、書き出し、主人公の設定、脇役の設定、語り手の設定、文体・語り口、対象描写、内面描写、会話、細部、結び、といった各項目ごとに5作品を取り上げて技術的な評を加えるというスタイルになっている。旧版と比較して取り上げている作品は最近のものに改められている(全部ではない)けど、技術的な解説の内容はほとんど同じ。
すが・渡部の対談である〈心構え篇〉と〈実践篇〉はさすがにおもしろい。とはいえ、いわゆる「純文学」作品だけでなくミステリを中心としたエンターテインメント系の作品にも言及しているものの、『文学賞メッタ斬り!』の網羅ぶりには及ばない(まあ、誰もそんなことは期待していないだろうけど)。個人的には、津原泰水古川日出男といった書くこと/語ることの技術にきわめて自覚的な作家の作品をこの2人がどのように評価するのか興味があるんだけど、名前すら出て来ないんだよね……(「エンタメ系」は売れ線だけですかそうですか)。
ところで余談ですが、

すが:他方で清涼院流水は、バイセクシャルな男について「宮本武蔵ほど見事にではないが、隆造は両刀を巧みに使いわけた」と書いてしまったりする。これをどう評価すべきか悩んでしまった。技術がないからこれが書けるのか、あえてこう書いているのか……。

あのすが秀実を悩ませるとは、さすが清涼院流水。この部分に限らず、清涼院流水に対するすが秀実の評価はどれも歯切れの悪い物言いになっているのがおもしろい。