蔭山浩一「長すぎる日はつもりつもって」(「Juniper1」掲載)

文学フリマで買った本を読もうと思って、本を開き、作品の冒頭の数行を読んで、気に入れば最後まで読む……ということをやって、最後まで読んだのがこの作品。
一人称の視点人物が中学生時代を回想して語るという形式の作品で、転校生を中心としたいくつかのエピソードが語られる。とはいえ、派手な事件は起こらなくて、転校生がテストで0点をとったとか、主人公が転校生にヘディングを教えてサッカーの試合で点をとったとか、日常の延長の出来事が淡々と綴られる。文体は適度に口語まじりで肩肘はった表現もなく平易な文章で、読んでいてたいへん気持ちのよい文章だった。計算づくの自然体といった印象だけど、それが鼻につくこともない。
誌面にかんしては、「……」が「・・・」だったり、鍵括弧でくくられた会話文の次の行頭が一字下げされていないあたりがちょっと気になった。
本全体の仕様としては、A5判で一段組み、なおかつ文字が小さめなのがちょっと読みづらい。表紙は4色刷りでオレンジを基調としたきれいな色使いで、マットPP加工が施してある。これで300円は安すぎじゃないでしょうか。

上記は同人誌の公式サイト。