高橋源一郎『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』

性交と恋愛にまつわるいくつかの物語

性交と恋愛にまつわるいくつかの物語

買った。読んだ。今年初の読了本。
小説トリッパー」に掲載された中短編5作品をまとめた作品集。
高橋源一郎の書く性交はいつも滑稽で物悲しい。

上記の朝日新聞社のサイトで収録作「キムラサクヤの『秘かな欲望』、マツシマナナヨの『秘かな欲望』」の冒頭が読めます。

  • ポルノ作家の一人称で語られるこの本でもっともダークな作品「唯物論者の恋」と、「『上質』の性交」を描いてちょっと感動的な「ウィンドウズ」がとても良かった。
  • 「キムラサクヤの『秘かな欲望』、マツシマナナヨの『秘かな欲望』」のファッション誌の記事からの引用で構成された部分は『文章教室』を思わせる。でも、金井美恵子みたいに皮肉っぽくはない。
  • 唯物論者の恋」の主人公が書いたポルノ小説と、それに対する編集者の慇懃で批評的な文章の対比がおもしろい(『ジョン・レノン対火星人』では過剰にポルノを戯画化していたけれど、この作品ではいかにもありそうな「ポルノ小説」の文章が用いられている)。
  • 小さな恋のメロディ」(SF!)と「宿題」(少女と動物園と「影」)は「小説トリッパー」で読んだような気がするけど、他の作品(あるいはエッセイ)と混同しているのかもしれない。よくあることなので、気にしないことにする。
  • とてもおもしろかった。