高橋源一郎インタビュー

話は、英語版が発表されたデビュー作「さようなら、ギャングたち」を中心に、「村上春樹との関係」「80年代日本文学の騎手」、そして「本の読み方」へと広がり、現代文学に興味のある方には必読のインタビューとなりました。

「騎手」は「旗手」の間違いと思われます。

高橋:自分の作品を批評的に見ると、これは紹介されるべきすぐれた現代文学である、と思います。翻訳されなくてはいけない種類の本だと。(作家として)「自分の本だから」と言うよりも、(批評家として)そう思うんですよ。

当時、僕は(「さようなら、ギャングたち」で)それまでの日本文学にはなかったことをやろうと思っていたんです。一つは、アメリカ文学的なもの、日本文学の湿った感じではなくて、もうちょっと乾いた、アメリカ文学の形とか考え方を小説に取り入れようと。もう一つは、日本の現代詩がとても優れた表現方法だと思っていたので(当時、詩と小説はまったく別のものだったんですよ)、現代詩の言葉を使って書こうと。アメリカ文学が持っているものと、現代詩の言葉の力を取り入れた小説というのは、それまで誰も考えたことがないし、画期的な作品になるだろうという絶対の自信を持って書いていたんです。

それで「風の歌を聴け」を読んだら、村上さんがアメリカ文学を取り入れて小説を書いている。「半分、先にやられた!」と、愕然とした覚えがあります。2ページ読んだところでそのことが分かって、読むのを止めました。「こればまずい!」と思って(笑)。