高橋源一郎『ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ』

ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ

ミヤザワケンジ・グレーテストヒッツ

読了。
宮沢賢治の作品からタイトルを拝借して(とは限らないんだけど)書かれた24篇の短篇小説を収録した作品集。
元になった作品の一部は、青空文庫で読めます。

とはいえ、私のようにほとんど宮沢賢治の作品を読んだことのない読者でも充分に楽しめる内容になっている。
例によって既視感のある作品も少なくないのだけれど、例えば『君が代は千代に八千代に』あたりと比較すると、質・量ともに充実していて、高橋源一郎の良質な部分が堪能できる。

「『さて』」と娘はいった。「『どうして、パパはおまえのことが好きだかわかるかい?』」
 わたしは黙って娘を見ていた。じれったそうに娘はいった。
「これは、あたしがパパで、パパがあたしになる遊びなのよ」
「わかった」とわたしはいった。「『わからないわ』」

  • 「革トランク」(P.43)