ジョン・ファウルズ逝去
『コレクター』と『魔術師』しか読んでいなくて、『マゴット』と『アリストス』は何年も積んだまま放置しているし、『フランス軍中尉の女』や『ダニエル・マーチン』も未読だし、決して良い読者ではなかったんですが、『魔術師』はいつかこういう小説が書けたらいいなぁと思っているくらい好きな作品で、別に新作を心待ちにしていたというわけでもないのに、その作者が亡くなったと知ってとても悲しい。
松浦寿輝は『魔術師』について次のように書いている。
緻密な論理パズルであり、洗練されたポルノグラフィーでもあり、哀切なビルドゥングス・ロマンでもあるという知的な仕掛けに満ちた長編。小笠原豊樹の訳文が素晴らしい。
- 松浦寿輝編『文学のすすめ』(P.210)
ちなみに、松浦寿輝の初の長編小説である『巴』は、あからさまに『魔術師』を意識した作品になっている。
残念ながら、『魔術師』は現在は絶版。でも、傑作です。