知識と想像力で描く近代ヨーロッパ

佐藤亜紀インタビュー。

――そもそも「感覚」という設定を考えられたのは、どうしてなんでしょう。
佐藤 きわめて古典的なかたちでテレパシーの話を書きたかったんでしょう。ただしテレパシーを書くにしても、読んだ内容を三角カギカッコに入れたりするのは、大ペケだと思うわけです。筒井康隆さんの『七瀬ふたたび』は傑作だと思いますが、無意識のある構造までみてとれるということと、他の五感との関係がどうなってるのかを書いてないのが、多少、不満でした。だから身体感覚や、それから、さっき言った社会行動とそういう能力がどうつながってるのかを書きたかったのです。

佐藤 次は一九二〇年頃の内戦時代のウクライナで『ワイルドバンチ』をやります(笑)。飛行機は飛ぶし、機関銃はあるし、最高でしょ。革命時代のメキシコと一緒で、事実上の軍閥が割拠していて、どっちにでも転ぶようなやつがいっぱいいる。この間、論文集を読んでいたら、なぜウクライナの内乱はおさまったのか?元気のいい奴から順番に死ぬから、だって(笑)。ほかに何か言うことないのか、という感じがしますが、そういう世界もいいかもしれないと。