貴志祐介『硝子のハンマー』

硝子のハンマー
読了。
防犯コンサルタントと弁護士のコンビが密室殺人の謎に挑む多重解決の趣向が楽しい第一部と、一転して犯人が犯行に至るまでの経緯を倒叙形式で描く第二部で構成されている。第一部における仮説の検証、第二部における犯人の行動、どちらも具体的な細部が(若干、説明的なきらいはあるものの)的確に表現されていて、それだけでも充分におもしろい。論理的に犯人を指摘できるつくりにはなっていないけれど、「ミステリ的な話法」を用いた作品としてきわめて高品質。
このミステリーがすごい!2004年版」の「私の隠し球」を読み直してみたら、『狐火の家』『クロックワーク』という仮題の「密室もの」の第二弾、第三弾の予定もあるらしい。現代的な密室、という意味ではかなり多くのネタが詰め込まれた本作を書いたうえでなお、まだ「密室もの」を書くネタ(「トリック」に限らず、事件を構成するさまざまな細部や情報)があるというのは驚き。
あと、本作は「途中で犯人を変更した」らしいけど、当初の犯人は誰だったんだろう? と、これは余談。