小川勝己『あなたまにあ』

あなたまにあ

あなたまにあ

小川勝己3冊目の短編集。

  • カバーをはずした表紙が素敵です。
  • アンチ・ラブストーリーの「聖夜」と、ダメヤクザを主人公にした「壁紙」が良かった。
  • 死体解体ネタと食人ネタを持ち出すと、ネタ依存度が高くなって作品としてのおもしろさのランク下がるので、そろそろ禁じ手にしてほしい。
  • 以下、どうして小川勝己作品が好きなのか? という自分語り&自己分析。
    • 小説を読んでいると、ウィルスに反応するアンチウィルスソフトのように、ある種の表現や物語内容に対して、自分の内側にあるペシミズムが否応なく反応してしまうことがある。いわゆる「引っかかりを覚える」という状態で、どんなにおもしろい物語だったとしても、作品を充分に楽しむことができなくなってしまう。小川勝己の作品は常に乾いたペシミズムを内包している。だから、読者である自分の内側にあるペシミズムをわざわざ持ち出す必要がない。登場人物が厭なやつばかりだったり、物語の過程や結末で登場人物がひどいめにあう作品ばかりなのに……というか、逆にそういう作品だからこそ、どこか「安心」して読めるのかもしれない。というようなことを『あなたまにあ』を読みながら考えていた。