歌野晶午『ジェシカが駆け抜けた七年間について』

ジェシカが駆け抜けた七年間について (ミステリー・リーグ)
読了。
良くも悪くも歌野晶午らしい作品だなぁと思った。
アメリカのクラブチームに所属する日本人女子マラソン選手が、監督に対して恨みを抱いている……というのを表現するために、(本筋にあまり関係ない冒頭部のネタバレ)→丑の刻参り←(ここまで)をさせるってのは、何というか、作品のバランスを考えると、やっぱり相当に奇妙な発想だと思う。いや、まあ、そのちぐはぐっぷりが歌野晶午の「らしい」ところで、荒唐無稽な作品においては魅力のひとつであることも確かなんだけど、場合によっては単なる「B級くささ」につながりかねないところで、今回の場合は特に作品の雰囲気を壊していると思う。物語的には読者の同情を誘うべき人物であるのに、深刻というよりはギャグにしか見えないもんなぁ……。