reading

舞城王太郎「みんな元気。」(「新潮」9月号掲載)

ようやく読み終えた。 どうも登場人物が多すぎて名前を覚えられず前半は読み進むのがつらかったんだけど、後半の杉山家を舞台にしたあたりはたいへんおもしろかった。可能性としての3つの「未来」が同時に重なって目の前に存在しているという状況を強引な力…

松浦寿輝『半島』

http://www.bunshun.co.jp/book_db/html/3/23/11/4163231102.shtml ■内容紹介■ 寂れた島に仮初の棲み処を求めた元大学教師。謎めいた女と暮らし、現とも虚ともつかぬ世界に嵌っていく。幸せも自由も幻なのか…… 1日1章ずつ読んでいる。 昨日は一章の「植物園…

真保裕一『奪取』

読了。 偽札づくりの過程を異常なくらい詳細に描いたクライム・ノベル。これはむちゃくちゃおもしろかったです。 ただ、ちょっとだけ気になったのは、機械の作動音にかんしてあまり注意を払っている様子がないこと。どれもかなり大きな音がするはずで、深夜…

真保裕一『連鎖』

これは借りて読みました。 第37回江戸川乱歩賞を受賞した真保裕一のデビュー作。 真保裕一の作品を読むのはこれが初めて。何となく乱歩賞でデビューした作家の作品は趣味にあわないという思い込みがあって敬遠していたんですが、予想以上におもしろかった。 …

舞城王太郎「駒月万紀子」(「ファウスト」Vol.3掲載)

〈奈津川血族物語〉の最新短編。予告どおり「二郎」の恋人が語り手。舞台は西暁町や調布、ではない。 正直なところ読むまでは不安だったんだけど、実際に読みはじめたらたいへんおもしろかった。 あー、そんなところにナイフを隠しますか。 長編も楽しみ。

浅暮三文『ラストホープ』ISBN:4488445012

読了。今まで読んだ3作(『ダブ(エ)ストン』、『鯖』、本作)のなかではベスト。なかなかおもしろかった。後日、もうちょっと具体的な感想を書きます。

舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」(「群像」1月号)

再読してみた。 初読時はサイト冬眠中だったので、感想を書いていないんだけど、ぼんやり思い返してみれば、題材的に感情移入して読みつつも、全体的には「微妙」だと感じた記憶がある。 読み直してみると、意外なほどおもしろかった。『暗闇の中で子供』の…

浅暮三文『ラストホープ』ISBN:4488445012

を読みはじめる。 宝石泥棒を引退して釣具店を経営する2人組を主役にしたクライム・コメディ。なかなか好感触。フライフィッシングにかんする細かな記述が楽しい。 ところで、文庫の表4や扉に書いてある「あらすじ」と、本に挟まれている新刊案内に書いてあ…

望月諒子『殺人者』ISBN:4087477134

読了。 id:helioterrorism:20040625#p2で、 第一章に入ったとたん、主人公が「小説を書く」などと言いはじめるのでちょっと萎えた。 と書いたんだけど、(私にとって)幸いなことに主人公が早々に挫折してくれたので、それ以降は妙な引っかかりを感じること…

青山景・漫画/舞城王太郎・原作「ピコーン!」(「IKKI」8月号別冊付録)

ようやく読んだ。 エロ多めだと勝手に思っていたんだけど、意外とそうでもなかった。結末に直結してるんだから、ここはもっと気合いを入れて描かないといかんだろ〜、と思った。 あと、小説の文章をそのまま絵の背景にだーっと書くのはちょっと手抜きだと思…

望月諒子『殺人者』ISBN:4087477134

プロローグを読んで、お、これはおもしろい、この調子なら期待できそう、と思っていたら、第一章に入ったとたん、主人公が「小説を書く」などと言いはじめるのでちょっと萎えた。(参考→id:helioterrorism:20040623#p1)

望月諒子『神の手』

どうも読み方を間違った気がする。 ごく普通に「失踪した作家をめぐるミステリ」として読めばよかったのに、どういう思い込みからか、「小説についての小説」あるいは「〈書くこと〉についての小説」として読み進んでしまったのだ(いや、もちろん、「失踪し…

金井美恵子『目白雑録(ひびのあれこれ)』ISBN:4022579234

買ってきた。 ごめんなさい。私も金井美恵子の小説に出てくる服飾用語がわからないのに、辞書をひいて調べようともしませんでしたよ。思い返してみると、私が『柔らかい土をふんで、』や『噂の娘』や、文芸誌に掲載されている最近の短編が苦手なのは、単純に…

望月諒子『神の手』ISBN:408747691X

http://syousetsu-subaru.shueisha.co.jp/osusume/0406/ http://www.ebunko.ne.jp/hayashi.htm 大森望氏がきわめて正攻法でプッシュしている(←失礼)ので興味を持って手に取ってみた。 2/3くらい読み進んだところなんですが、作中で登場人物たちが示す「小…

米澤穂信『愚者のエンドロール』

文化祭に出展する自主制作の「ミステリ映画」は、真相不明のまま中断していた。前作『氷菓』の古典部のメンバーが、未完成の「ビデオ」とスタッフの証言をもとに結末探しに挑む。 作者も「あとがき」で書いているように、バークリーの『毒入りチョコレート事…

米澤穂信『氷菓』ISBN:4044271011

なぜかもう新刊書店には出回っていないものだと思い込んでいて、実際、都内の大型書店を何件か探したところ、『愚者のエンドロール』も含めて見当たらなかったので、古本で探すしかないかなぁと思っていたのだけど、地元の書泉に置いてあったので大喜びで買…

貴志祐介『硝子のハンマー』

読了。 防犯コンサルタントと弁護士のコンビが密室殺人の謎に挑む多重解決の趣向が楽しい第一部と、一転して犯人が犯行に至るまでの経緯を倒叙形式で描く第二部で構成されている。第一部における仮説の検証、第二部における犯人の行動、どちらも具体的な細部…

貴志祐介『硝子のハンマー』ISBN:4048735292

まだ第一部を読み終えたところなんですが、たいへんおもしろい。 以下、まったく関係のない話。最近、新刊を読むタイミングが周回遅れになっているような気がする。いや、別にいつ読んだっていいんだけど、発売直後に読む楽しみ、というのも確かにあると思う…

伊坂幸太郎『チルドレン』

うーん。どうも伊坂幸太郎の文章とは相性が悪いみたい。 「お話」としては決して嫌いではないんだけど、細部描写の薄さと、その一方で(個人的には余計と感じる)説明的な表現が散見して、読んでいて引っかかることがたびたびある。 例えば、 「何の映画だ」…

米澤穂信『さよなら妖精』

タイトルが良い。「妖精」というのは、もちろん、主人公たちの前に現れたユーゴスラヴィアからやってきた少女の比喩で、その少女との別れを示していると同時に、物語の終盤に至って主人公が抱いていたさまざまな「幻想」(=「妖精」)がもろく崩れ去り、「…

米澤穂信『さよなら妖精』ISBN:4488017037

読了。 上記のオフ会で、いま『さよなら妖精』を読んでいると話したら、のりしろさんが「先にスニーカー文庫の2作を読んだほうがいい」と助言してくださったんですが、結局、帰宅途中の電車で続きを読み、帰宅してからそのまま最後まで読んでしまいました。 …

麻耶雄嵩『名探偵 木更津悠也』

読了。名探偵・木更津悠也とワトソン役である香月実朝のコンビが活躍(?)する4つの事件を収録した短編集。ちょっとねじれた名探偵とワトソン役の関係が楽しい。 表紙見返しにあるワトソン役=記述者・香月実朝が書いた(という設定の) もちろん(引用者注…

小倉千加子『結婚の条件』

同居人が図書館で借りてきたのを何げなく手にとって読みはじめたら、おもしろくてそのまま最後まで読んでしまった。 amazonのカスタマーレビュー(全24件) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/402257884X/customer-reviews/ 高橋源一郎…

佐藤亜紀『天使』『雲雀』

『天使』読了。そして、再び『雲雀』を読みはじめる。 『天使』は改めて読み直してやっぱりおもしろかった。「説明」を排した語り口、一種の「超能力」である「感覚」の表現が素晴らしい。キャラクタとしてはコンラート、ライタ男爵といった不良親父どもがか…

佐藤亜紀『雲雀』

前作を読んだのは2002年12月だから、そんなに昔のことというわけでもないのに、登場人物や物語の細部をすっかり忘れていて、先立って『天使』を読み直しておくんだったと後悔した。上記の解説ページの存在を知ったのも『雲雀』を読み終えたあとだった。とい…

佐藤亜紀『雲雀』

「感覚」と呼ばれる超能力を備えた人物たちの戦いを描いた『天使』(ISBN:4163214100)と世界観、登場人物を共有する作品をまとめた短編集。「別冊文藝春秋」に発表した3篇に書き下ろし1篇を加えた4篇を収録。 登場人物、時代背景、および作品の時系列につい…

舞城王太郎「矢を止める五羽の梔鳥」(「新潮」6月号掲載)

正直なところ、最近の舞城王太郎の小説は読んでもおもしろいのかそうでないのかよくわからなくて、もやもやした説明しがたい奇妙な感覚が読後に残る。この作品もそうだった。 文体が微妙に変わっていて、ちょっと佐藤友哉っぽい? と感じたんだけど、気のせ…

佐藤友哉「死体と、」(「新潮」6月号掲載)

ツッコミどころはないけど、さらっと読んで、特に残るものもない。文体、視点の処理、題材、展開、書き出し、結び、などそれぞれ工夫しているのはわかるし、それぞれ工夫の結果としては「悪くない」と思う。強いて問題点をあげれば、描写が弱いということだ…

三浦俊彦『論理学がわかる事典』

http://members.jcom.home.ne.jp/miurat/ronri-j.htm 実はまだ読み終えていない。 通勤電車のなかで読んでいるんですが、今日の帰宅途中、電車を乗り過ごしてしまった。熱中していた、というよりは、本の後半に入って頭の処理能力が追いつかなくなり、周囲の…

よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』1巻 ISBN:4403617492

笑った。むちゃくちゃおもしろい。 白血病を克服した主人公・花園の高校生活(友情、家族愛、オタクネタ入り)を描いた学園マンガ。友人、教師、家族など、それぞれどこか非常識な側面を持つ登場人物がたいへん魅力的に描かれている。 「どーして屈辱の「辱…